わが国の死因の上位を占める心血管疾患(心筋梗塞・脳梗塞など)の主要な原因は、肥満を基盤とした糖尿病・脂質異常症・高血圧症などのいわゆる生活習慣病および様々な腎臓疾患に起因した慢性腎臓病と考えられます。また近年、生活習慣病を病態基盤にした慢性腎臓病(糖尿病性腎症、腎硬化症など)の患者数が激増しており、維持透析導入の原因疾患は、これらによるものが約7割を占めることが明らかになっています。厚生労働省からの最新の報告では、糖尿病にかかる国民医療費は年間1.2兆円、人工透析にかかるものは年間1.6兆円に上ると推計されており、これだけで国民医療費全体の約6.5%をも占めます。したがって、少子超高齢化が加速する中、医療費を適正化し真の健康長寿社会を実現するためにも、生活習慣病、内分泌代謝疾患、腎疾患に対して共通する根本的な原因を解明し先制医療を実現すること、また一元的・包括的に治療することが何より患者さんのためにも最善・最適の医療体制と考えられます。しかしながら、全国的にみてもこれら疾患をひとつの診療科で全人的に予防・治療する体制はなかなか整っておりません。
日本医科大学内分泌代謝・腎臓内科学分野では、今まさに直面する医療・健康に対する国民的課題の解決に向けて全ての教室員が日々研鑽を積んでおります。従来、内分泌学、代謝学、腎臓学は、全身の恒常性維持機構(体液の量・電解質・浸透圧・pH、血糖などの栄養素、血圧・血流、体温、成長、エネルギー代謝、性周期などの維持機構)を明らかにする学問であり、これらの学問領域が融合されることによって、生命体をさらに統合的に広く深く理解することが可能となってきます。内分泌代謝・腎臓内科学分野は、「全身を診る診療科」を合言葉に、「恒常性を制御し健康長寿社会を実現する」ことをミッションとして掲げ、教育・研究・臨床そして運営に至る全ての活動に対して、教室員一丸となったone team体制で臨んでおります。肥満症、糖尿病、内分泌疾患、高血圧症、脂質異常症、腎疾患、慢性腎臓病そして腎不全・人工透析、さらに心血管疾患の一次・二次予防、生活習慣病に関連する癌の早期発見など、広角の診療姿勢を涵養する全国的にも類を見ない全身を診る診療科として、それぞれの患者さんに最適な医療の提供に努めて参ります。